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広島動物愛好会 平成15年8月例会参加
『テーマ:レッサーパンダの現状』

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広島動物愛好会 平成15年8月例会参加『テーマ:レッサーパンダの現状』

日付:2003年8月10日
講師:十年位前まで7年位レッサーパンダを飼育しておられた飼育員さん
内容:日本のレッサーパンダがどういう状態にあるか、人工保育の話


講義内容--------------------------------------------------------------

現在は少し変わっているかもしれませんが、野生では、ネパール・インドで1000頭、中国で2000頭位いるのではないかと言われています。
レッサーパンダはネパールにいるネパールレッサーパンダと、中国にいる四川レッサーパンダの2種が存在します。
ネパールと四川は一緒にするとわからなくなるので別々に飼われています。
今では日本にいるのは殆ど中国からきた四川レッサーパンダです。
ネパールと中国合わせてせいぜい多くみても4000頭位しかいないのですが、これが動物園になると658頭という事になります。
(現在はもう少し増えてるかもしれません。)
その中で日本で飼われているのが233頭の50園ですので、世界の3分の1が日本で飼われているという事になります。

日本のレッサーパンダがいつごろから飼われているのかをお知らせしたいと思います。
飼育開始は1978年となっていますが、これはきちっとした記録が残っているのが1978年という事で、これ依然にも何箇所かでポツポツと飼われていた形跡があります。
最初入って来てたのは、ほとんどがネパールのレッサーパンダでしたが、日中友好で日本と中国の動物交換が盛んになり、広島市は中国の重慶市と姉妹都市縁組みを結んでいます。

今日本の動物園で多くの動物が血統登録をされてます。レッサーパンダも1986年から始まりました。
担当園は静岡の日本平動物園が担当されています。そしてこの翌年の87年に安佐動物園に重慶市から3頭程やってきました。
このあたりから中国との交流が盛んになり頭数が一気に増え、この96年あたりで飼育頭数が200頭を越えるようになってきます。
その後、中国から入ってくるのが止まったこともあり、一時減ったこともありますがわずかずつ増えています。
日本で生まれたレッサーパンダも少しずつ多くなり、レッサーパンダの飼育は順調で問題がないようにみえますが、レッサーパンダの寿命が15年として、200頭中年間15頭くらいが死んでしまいますので、数を維持するためには年間14・5頭子供が生まれなければなりません。
そのため今いるから大丈夫というわけではなく、今からもちゃんと繁殖を続けていかないと、飼育下での維持が出来ないということになります。


【血統図について】

血統図には国内で今飼われている全てのレッサーパンダが色別に書かれており、それぞれの繁殖の元になったお父さんお母さんの色が書いてあります。
それにより、今この子は誰と誰と誰と誰の血が混じっているという事がこの表で分かります。

中国から来たものがたくさんいますが、もしかしたら全部同じ区域でとられたものだとしたら、血液的にものすごく濃いかもしれません。
一応日本にきた後のものは血統を考えながらやっていますが、元が近かければ何も意味がないので、全部ではないですが日本のレッサーパンダのかなりの部分について、お母さんの方の血液関係を全部調べてもらいました。
ミトコンドリアDNAを使った血統を調べていく方法で大まかに分布がわかりました。
そして安佐動物園のレッサーパンダを見ると、悪いことにアイアイが数の多いグループA(図がないので仮称)になり、ユウユウが数の多いグループB(図がないので仮称)になります。
ミンミンは数の少ないグループになります。ミンミンのグループあたりが非常に数が少なくどんどん増えてもかまわないというグループという事がわかります。


【人工保育について】

安佐動物園にやってきたのは、オスのユウユウ、メスのアイアイとミンミンです。
アイアイの場合は、産んだらちゃんと自分で育てるのですが、ミンミンは噛んでしまったり、全然面倒をみなかったりで自分が育てたことがありません。
そしてミンミンの場合、11頭も産んでいるのですが、その中で育ったのは3頭だけです。その3頭もミンミンが育てたわけじゃなく、人工保育で育てたり、アイアイにお任せしたりして何とか育ってます。

その3頭の内の1頭バナナは人工保育で育ちましたが、ナカナカ優秀で、今まで7頭産んで6頭育っています。
残念ながら今年も産んだのですが、生まれてきた時すでに死んでいたのか食害されて亡くなりました。
マイは枚方パークの方から一時お借りしてきたのですが、この子をよく調べてみると血統図で一番多いグループになるので、出来ればマイはあまり増やさないほうがいいと判断しました。
この子はいいオスを当てがうとちゃんと産むのですけが、あまり増えても困るということで、今単独で飼育しています。
安佐動物園では一時6頭も飼育できる時もありました。
ミンミンは、赤ちゃんを産んでいると思ってみると、もう噛んでしまっているということもあり全然育たないので、これはもうミンミンに育てるのを任せていたらどうにもならないという事で人工保育を何回かやりました。

最初は他の動物と同じ感覚で、エアコンもなく普通の場所でミルクをやって育てました。
ところが一ヶ月くらいで死んでしまいました。
翌年はレッサーパンダはすごく暑さに弱いので、暑すぎたのではないかと考えエアコンをつけました。
しかし、やはりこれも一ヶ月位してだめでした。
動物はお母さんのお乳、初乳を飲まないと抵抗力が弱いというのは一般的に言われていますが、これはもしかすると初乳を飲んでいないので、レッサーパンダは初乳を飲まないと弱いのかもしれないということで、次の年はエアコンと、お母さんに麻酔をして、初乳を3日ぐらい飲ませてみました。
その結果、抵抗力がつき今年はうまくいくと思いましたがやっぱり失敗しました。

その次の年になると、アイアイが赤ちゃんを2頭産みました。また、その5日後にミンミンが1頭産みました。
人工保育をしても1ヶ月ぐらいしか上手くいってないので、今回は変わった事をしようと思い、アイアイにミンミンの子供を預けたら上手くいのではということで、アイアイの部屋にミンミンの子供を入れてあげました。
すると、アイアイはその子も自分の子もちゃんと育児してくれました。

また翌年産んだので、この次はお乳を制限してやってみたらどうかということで始めました。
ダイエット方式で人工保育し2頭が無事に育ちました。
ばななは今も安佐動物園にいて、毎年のように赤ちゃんを産んで子孫を残し続けています。
りんごも富山の動物園に行って、去年も今年も赤ちゃんを産んで順調にお母さんになっています。

チンパンジーなどは子供の時に人間が育てると、大きくなってからなかなかチンパンジーという認識が出来ず、繁殖をして子供を育てるというのは結構難しいのですが、レッサーパンダクラスでは、そこまで学習する部分が少なく、かえって人工保育だと赤ちゃんを産んだ時にも人の事を怖れずに、向いてるような時もあります。
子供を育てるのは学習ではなくて、本能の方が重要の様な気がします。
ただ、人間が育てる時でもいいかげんに乱雑に育てると、どこか精神的に変なもの、変な個体になってしまうので、ちゃんと可愛がってやらないといい親にはなれません。
ミンミンはおそらくミンミンが親になっていく過程で、どこかで、ちゃんとしたレッサーパンダとしての扱いを受けていないから、大きくなった時にそういう精神的に不安定な状態の動物になったのではないかと思います。


【飼育ハンドブックを作成するに当たり】

レッサーパンダの飼育に関するアンケートがものすごく多いです。
年に3回くらいあちこちの動物園から、食べ物は何か獣舎の構造はどうか、エアコンはどうかとアンケートが次々きます。
その結局アンケートを各園が行い、結果は自分の所が持っているので誰にもわからないということになります。
そうすると新しく作る動物園がまたアンケート出し頻繁にアンケートが来ていました。

1999年にレッサーパンダの繁殖検討委員会というのが静岡でありましたが、この繁殖検討委員会というのは血統を考えながら、次はどの子を組み合わして繁殖させるか考える委員会です。
ここで、レッサーパンダの飼育ハンドブックを作ろうという話が出ました。
ハンドブックを作るにしてもよその飼育状況を把握していなかったため、アンケートを飼育園全部に渡し全体像を把握しようと考えました。
そしてそれをまとめた後、ハンドブック作成に取りかかり、2003年の5月頃やっと出来上がりました。
アンケート項目を数えてみると256項目ありました。
これを見ると、えさは何か、広さはどうか、どんな構造かわかるようになり、これだけでももういいかなという位のデータ量になります。
これはインターネットで見られるようにして、動物園の人ならいつでも見られるように出しています。

ハンドブック制作にあたりどういうものがいるのか、大きくわけて、総論、施設整備など、10項目位ありました。
安佐動物園の人達だけではとても全部書けないので各園に振り分けました。

中身の一部を紹介しますと、たとえばこういう事でもはっきり分かっていませんでした。
レッサーパンダがどのように一年のサイクルをしてるかをきっちり書いたものがなかったのです。
今回、なるべく字を少なくしてグラフや表、絵を沢山使いました。文章で書くと全部読んでいかないといけないのはしんどく、なるべく文章は短く、なるべく箇条書きで作っていくようにしました。

例えばメスの交尾前後の変化ですが、いつごろからか匂いつけが増え、泣き声や追尾が多くなります。あとこれは特に安佐の特徴だと思うのですが、交尾前にはメスの陰部がものすごくふくらんできます。
こういう状態はいつも毎日観察していないととても出てこないデータで、ふくらんできたのでそろそろ交尾だなというのが安佐では分かっていたのですが、よその方にも伝える為のものを作っています。

オスの方も睾丸が季節によって随分変化します。
繁殖期ではないときはしわしわの梅干しみたいになってうるのですが、繁殖期になるとぷりぷりの桃みたいになって張切っています。こうなると大丈夫です。
感触的には、オスというのは変化があまりなく、いつもダラダラした感じが割とあります。
メスもよく繁殖するのは繁殖以外は何もないが、繁殖期になるとぷくっとふくらむというメリハリのあるものが繁殖に向いていると思います。
その中で、えさのことについてよく聞かれますが、人工飼料をよくやっています。
おかゆなのですが色々な種類があります。
果物をミルクに浸したものや、肉やミルク、ドッグフード等を混ぜたものとか、後、レッサーパンダ用のペレットですね。
今はこのペレットを中心に安佐ではやってますが、これは市販されているもので出来ればどの園もこれを使ってくれると、よその動物園に移動したときにすぐ同じものを食べれるので安心なのですが、おかゆとかだと作り方が園によって違い、すぐに食べなかったりするので、出来ればこのペレットを使ってもらったほうがありがたいと思います。

--------------------------------------------------------------ここまで


これで、第一部?会場でのお話が終了、これから、一般公開されていないうらの飼育所、調理場等を見学。

レッサーパンダ、裏の飼育場にて

飼育場にいたのは、メスのアイアイ、オスのユウユウ
写真

飼育下で確認されている最高寿命は14歳ですが、アイアイ(たぶん)はそれを超えている。
もともとレッサーパンダは体のつくりは肉食獣だが、リンゴ等を食べてもおなかの中で粉々にできない。
うんちに形が残っている。
写真

年のせいか噛むことが得意ではないらしくウンチの中に残った笹の繊維が若い子達よりも粗い。

以上、例会報告でした。

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